ニュージーランドで「有害デジタル通信法」が成立


ニュージーランドで「有害デジタル通信法」が成立
2015年7月6日、ニュージーランド議会で「有害デジタル通信法」という法案が可決されました。有害デジタル通信法は、インターネット上で、特定の個人に対して誹謗中傷すること、または「荒らし行為」を犯罪として認定する法律です。ニュージーランドが決定したこの法案では「インターネットに誹謗中傷を書き込むこと」自体を罪として取り扱うことができるようになります。違反者は最大5万$NZ(日本円で約400万円)の罰金、最大3年の懲役が科せられます。
この法律が適用されれば、具体的には下記のようなことが行われます。

・被害者から通報を受けた専門機関が、調査を実施
・違法コメントを投稿したユーザーに対して、24時間以内に削除するよう警告
・ユーザーが警告に従わない場合には、サービス運営元(TwitterやFacebook、Googleといったサービス提供者)にも削除要請を行う


ニュージーランドで「有害デジタル通信法」が成立

もし、自分が誹謗中傷されたら…?対処は2つ!

現在の日本では、こうしたネット上での誹謗中傷を罰するには名誉棄損などで訴えることが可能です。

(例)
・第三者から見て、個人を特定できるようなわいせつな画像をつかった、嫌がらせ →リベンジポルノ規制法、名誉棄損罪など
・直接的な言葉で、個人を誹謗中傷された→名誉棄損罪、威力妨害など

ただし、これらの場合、“ネット上に誹謗中傷を書き込む行為”そのものが罪に問われているわけではありません。今回ニュージーランドで採決された有害デジタル通信法では、それ自体を罪として扱うことができる、という部分が世界でも注目を集める要因となっているわけです。

仮に、私たち個人がネット上で誹謗中傷を受けた場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

1.掲示板・SNSなどのウェブサービス提供者に連絡し、書き込みの削除を要請する
2.名誉棄損・リベンジポルノ被害・個人情報漏えいといった名目で、司法に持ち込む

主な対処は、このふたつです。
ただし、いずれの対処を行うにしても被害者自身に非常に労力がかかってしまうこと、また、解決まで長い時間を要してしまうことを認識しておくことが重要です。(特に1.は、どれだけ時間をかけても、完全に書き込みを削除することができない場合もあります)

インターネット上で傷つけられている人が大勢いる現状

1995年頃より、日本でもインターネットが急速に普及しました。また、2007年にはiPhoneが登場しスマートフォンの普及も進みました。2006年にはfacebookが一般公開され(日本に上陸するのはまだ先ですが)、同年、Twitterも誕生していています。掲示板やSNSなどのサービスは、非常に自由な発言の場として、私たちの暮らしに溶け込んでいきましたが、そうした性質からか、心無い発言により傷つけられた人が多いことも事実だといえるでしょう。
今回の有害デジタル通信法は、スコットランと北アイルランドにて同様の法律がすでに採用されています。インターネット上でストーキング被害にあったり、誹謗中傷により自殺に追い込まれている人々がいることが問題となっているからです。
個人に対して(後日特定される可能性はありますが)匿名で攻撃する行為そのものが、世界中で頻発しているということですね。

“言論の自由”が脅かされるのではという専門家の意見も

一方で、「知る権利」と「忘れられる権利」の対立にあるように、この法律が施行されることによって「言論の自由」と「ネット上での誹謗中傷の書き込みが罪になること」とが対立するのではないかとする専門家もいるようです。会話は生き物であり、その時々の文脈によって内容の程度感も変わってくるということでしょう。会話の中身を、どこからが罪で、どこからがそうでないのか、線引きすることが非常に難しいということです。
 
有害デジタル法では、下記のようなことを罪とするとしています。
・重要な個人情報を流出させること
・攻撃的、威圧的な言論、脅迫行為
・分別ある人にたいする攻撃 
・わいせつな発言
・虚偽の主張
・秘密情報の漏えい
・特定の個人を攻撃するように扇動する行為
・自殺を促すような発言
・人種、国家、宗教、性別、性的嗜好、身体的な特徴を取り上げた差別的な発言

この法律に対する反応はさまざま

もちろんインターネット上で個人を攻撃し、精神的に追い詰めることは倫理上良くないということは世界中で理解されることかと思います(インターネット上以外での人間関係でもそうですが)。ネットいじめが減少するから、といったことで賛同するネットユーザーも多くいます。また、それとは逆にこの法律の効果を疑問視する声や、先ほど紹介したような言論の自由が制限されてしまうのではないかといった部分で、反対する意見も多く見られており、賛否が分かれる法律でもありますね。

参考URL

  • http://www.bbc.co.uk/newsbeat/article/33409220/new-zealand-is-making-trolling-illegal